⑬水争い
 
  水量のとぼしい犬上川は、日照りがちょっとでも続くとたちまち田は水不足になりました。
四十九院で昔から行われてきた雨乞い行事について、つぎのように書かれています。

「蛇をつくって桂城神社に雨乞いのお参りをするようにと下之郷から言われたときはお参りしなければならない。一週間お参りすれば、その間に必ず雨が降る。もし、それでも雨が降らなければ大滝神社までお参りすることもあった。」と。
 いかに雨乞いが大きな行事であったかが分かるとともに、川上と川下の村の力関係もよく分かります。

 明治五年、大きな事件が起こります。「一之井騒動」と呼ばれる事件です。
 この年の5月、二之井を利用する敏満寺の農民が一之井の堰を切って下流に水を流したことから騒動になりました。
 犬上川の水は、一之井の堰で水を止めて甲良側へ流し、二之井では、そのたれ水を受けて多賀側へ流すしくみになっていましたが、水不足から一之井の堰で完全に水止めをしたのが原因と言われています。
 お互いの言い分は真っ向から対立し、7月8日、犬上川をはさんで争い、けが人も出ました。警官が出動し、やっと収まったということです。
 こうした水争いは、昭和21年に犬上ダムが完成するまでたびたび繰り返されました。
 
 雨乞いの蛇
 頭は大型の箕2つ。それに赤紙をはる。目は径7寸のスイノ2つ。内側にろうそくをともす。
鼻は径4寸ぐらいの竹3本。角は麦わらを束ねて銀紙をはる。胴は径5尺の竹の輪をつくり、3尺の間隔にひもでつなぐ。
竹の輪は赤木綿8疋でつつむ。ウロコは大型のもみ通しを型にして紺色に描く。ひげは2丈ぐらいの竹を割り、鼻の横に取り付ける。